堀込雅彦 2005年5月25日から30日

素朴なモンゴル

今回で3回目のモンゴル、なぜか惹かれるところがあるモンゴル。日本にいると気づかない事がモンゴルへ行ってみると、思い気づかせてくれる。それは、人のこころ。そして、テレビもラジオも携帯の着メロの音もない。夜になるとロウソクのゆれるなかでモンゴル人の歌声を聞き、なぜかそこに溶け込んでいる自分たちがいる。

5月25日、晴れ、私たちは、午後7時頃モンゴル国際空港に到着した。友人のトゥルと兄弟そして昨年もモンゴルでお世話になったお姉さんのバトマーと友人のウルチそしてドライバーのバスがーが、出迎えてくれた。空はまだ明るく日本の午後三時頃のあかるさ、この時期の日暮れは十時三十分を過ぎてようやく闇夜に落ちる。トゥルの両親のいるゲルに寄った  青い色のえり巻き風の物を微笑みながら私に手わたしてくれた。これは特別のお客さんへの歓迎の意味があるようだ。僕たちはお母さんが作ってくれた夕食を戴き、ただちに車で5時間、道なき道を進み夜中に目的地に着いた。とても寒い、ゲルのストーブに乾燥した馬糞を入れ火をつけた。ポカポカと暖かさが体からこころまで暖めてくれた。いつの間にか、眠りについていた。

5月26日、薄曇り、 朝、強い風がゲルの煙突を振るわせてきしんだ音をたてていた。風の音以外には何も聞こえてこない。外に出てみると、強い風のためか、寒さを感じる。厚手のジャンパーを着て颯爽と馬に跨がり、大草原へ出発。

5月26日、薄曇り、 朝、強い風がゲルの煙突を振るわせてきしんだ音をたてていた。風の音以外には何も聞こえてこない。外に出てみると、強い風のためか、寒さを感じる。厚手のジャンパーを着て颯爽と馬に跨がり、大草原へ出発。日本人六名、モンゴル人四名、十頭の馬がはるか遠い山を目指し進む。馬になれるまで三十分程度はゆっくり歩いたが、その後爆走して気分は最高。ガイドの親戚のゲルへ立ち寄った、暖かく家族が迎えてくれた。どんぶりに温かい山羊の乳を戴いた。臭いはなくとてもおいしかった。遊牧民の人なつっこさを改めて感じた。昼ご飯は、山羊の骨付きの肉を塩で薄味に煮付けたもので、本来の肉の味を充分出していた。とてもおいしかった。

午後は、羊と山羊の群れを馬で追い集めた。五百頭はいた。逃げ廻る山羊を群れに追い込む。とても面白かった。その後、狭い柵の中に子供の山羊と羊が集められていた。遊牧民が、一頭づつ捕まえて一人が仰向けに抑え、もう一人がナイフを上手に使い、少し切り、タマタマ(睾丸(こうがん))を手で取り出す。とても早い。傷口は指で押さえつけるのみ。解放された山羊や羊ははね回る物やたたずむ物もいた。おもわず痛そ~う。体に力が入ってしまった。ゲルで、お茶を飲み、さっきのタマタマの煮付けが出てきた。ガイドが言うには、わざわざウランバートルからこれを食べに来る人も多いとのこと。これを食べると元気が出るので珍重されているらしい。味は、ほたるいかに似ていた。二つ食べた。

夕食の後、モンゴルの大地に馬頭琴の音色が響いた。西の空に真っ赤な太陽と真っ青な空と真っ白な雲が音楽に溶け込み、幸せな気持ちになった。やがて空には満天の星、馬頭琴と大地を吹き抜く風、こころに染みた。馬頭琴の演奏が終わると一つのゲルに集まり、明日帰国する沙世ちゃんの送別会をした。友人のトゥルが遊牧民の友達を7~8人集め、交流会を兼ねてモンゴル・ウォッカで乾杯。一人づつ杯の酒を飲み干す。日本人にはちょっときつい。でも沙世ちゃんはぐいぐい飲んだ、すごい。歌が次から次へ出てくる。モンゴル人は手をのどに当て、ここから下には歌がたくさん詰まっていると言った。んーすごい、みんな歌が上手だ。一時過ぎまで酒盛りは続いた。外に出てみると満天の星、一つ一つの星が大きくて明るい。日本人が歓声を上げた。

 

五月二十七日 晴天、昨日の酒が少し残っている感じ。

九時過ぎに朝食。今日は馬とラクダに乗り、水飲み場へ向かった。トゥルと二人で猛スピードで馬を走らせた。風を切って進む、気持ちがいい。井戸からつるべを下げ水を汲み上げる。草原の草の味がした、うまかった。水飲み場の近くに砂丘地帯があり、とても綺麗なところであった。ラクダに乗った人は、月の砂漠の歌を口ずさんでいた。そこで、僕もラクダに乗ってみたくなった。ラクダは牛と同じで、鼻カンが付けられていてロープ一本でコントロールするのだ。ラクダの上はとても高い。少し歩かせてみた。大丈夫だ、行けそう。鞭を入れると走り始めた。いいぞ、いいぞ、これもやみつきになりそうだ。ゲルまでラクダを走らせて帰った。沙世ちゃんは十時頃にはウランバートルへ行くと聞いていたが、トゥルはまだ大丈夫と言いた。今日中に行ければ良いかななんて、僕もモンゴル的な時間感覚になってきた。一休みしてから、またもや全員が馬に乗り、西の方向を目指しゆっくり進んだ。一時間が過ぎた。トゥルに聞いてみる。あとどのくらいで目的地なの?もうすぐそこ。それから一時間が過ぎようやく到着。モンゴル人の言う「すぐそこ」は日本人とは違い、とてつもなく遠い事が分かった。地平線が見える国らしい。時間に追われない生活があるのだ。低い丘を越えると、三百頭以上いそうな馬の群に近づいた。

 

ここが今日のイベント会場だ。暴れ馬を捕まえたり、ミニ ナーダム(競馬)、モンゴル相撲が始まるのだ。まずは、暴れ馬をいかに早く捕まえ乗りこなすかを競うのだ。三組に分かれ始まった。遊牧民はより強く、より暴れる馬を探し乗ることが若者の自慢になるらしい。遊牧民が、6~7メーターはありそうなしなやかな棒の先に、革のひもで半円状にした道具を巧く使い、逃げ廻る馬を捕まえるのだ。それは、神業的である。ほんとうにすごい。そして、ロープで鼻の上を素早く巻き付ける、馬を落ち着かせて手際よく馬にハミを噛ませ、鞍をつけ、暴れ馬に乗る。馬はその場で暴れ、猛スピードで走ったり、方向を変えたりして、振り落とそうとする。若者はバランスをとりながら手綱と鞭で馬をコントロールして行く。馬はおとなしくなる。観念した様子の馬、これまたすごい。

 

ミニ ナーダムには一五頭が参加した四才の女の子から大人まで、地ひびきをあげて馬が爆走してくる、鞭を打ちながらゴールイン。優勝は、十一才の男の子。準優勝には四才の女の子が入った。モンゴル相撲は、土俵はなく、お互いに鳥の舞を捧げ、試合開始。手はついても良いが、肘とひざがつくか倒されたら負けになる。勝ち抜き戦で、行われた。トゥルの弟はモンゴルの地域の横綱とのこと。昨年から膝を痛めていて大会には出ていないようだ。膝のサポーターが痛々しかった。

六時過ぎにようやくお昼、お腹はぺこぺこだった。山羊を一頭料理し三十人以上で食べた。ビールが腹にしみた。生きていて良かった、そんな感じ。ようやく沙世ちゃんがウランバートルへ出発七時間遅れだ。 沙世ちゃんは初めてのモンゴルで馬と暖かい人のこrころに触れて良い思い出になったことでしょう。

帰り道綺麗な水がわき出ている所を見て帰ると、トゥルが言う。すぐそこ、またもや遠かった。澄み切った水が印象的だった。そこから二時間ほどでゲルに帰った。夕食は、十時過ぎ。その前に、顔を洗うシャワールームがあるのだが、シャワーからは申し訳程度のお湯が出てくる。体を洗うわけには行かない。それもそのはず、ゲルでお湯を沸かし屋根の上にあるタンクに持ち上げるのだ。申し訳ない感じがした。遊牧人はお風呂に入る習慣はない。気候もとても乾燥していて汗はかいてもすぐに乾いてしまうし、体はタオルでふく程度でよさそう。

 

五月二十八日 薄曇り 。。今日は、砂丘地帯の向こうにある山に行くことになった。砂丘の中を馬で走る、不思議な感じがする。砂丘の頂上で馬からおりてみた。風が吹くと砂に画かれたもようが動き出す。面白い、そしてとても綺麗だ。

砂丘を越えると桜の花が満開。でも日本の桜と違い、高さは50~60センチほど。花びらは五枚で薄いピンクをしていた。モンゴルの寒さと雨が少ないために、高さは低いが根っこは地中深く張っているとのこと。モンゴルのタンポポも3~5せんちぐらいで小さな花を付けていた。

馬から下り山の頂上を目指した。モンゴル人はタフだ。軽そうに登っている。僕は息が切れそうだ。やっと登り切った。すがすがしい風が体を吹き抜けていった。はるか遠くにゲルが見えた。小さな草花が芽を出し、花を咲かせ始め、やっとモンゴルにも遅い春がやって来たのだ。この辺も七月を過ぎると、辺り一面緑で埋め尽くされてとても綺麗になるらしい。午後はサナちゃん、トミーちゃんはラクダに乗りたいと言って出かけた。モンゴル語でラクダはテメーと言い、馬はモリとよばれている。日本人がテメーなんて言うから面白くなる。残りの僕と美帆ちゃん、牧ちゃん、アガ、トゥルで北を目指して馬で走った。一週間前に移ってきた遊牧民のゲルへ立ち寄った。激しくモンゴル犬が鳴き立てた。怖さを感じた。ゲルの中に入って見ると、テレビ そしてDVD・冷蔵庫まであった。風力発電で行っている。テメーを売ってたお金で買ったとのこと。(テメーはラクダ)

 

日本のおみやげを渡しゲルを後にした。小高い丘に近づくと空に大きな鷹が円を書きながら飛んでいた。丘の上は岩でおおわれていて岩の陰に鷹の巣があり、中にタマゴが合った。写真を撮り、ごめんなさいと言いながら巣から離れた。そろそろ、お腹もすいてきたのでトゥルに言うと、まだまだ明るいからもう少し行こうと言われた。時間は九時半を過ぎていた。歌をうたいながらゲルに帰った。。

 

夕食の時に、トゥルの幼なじみの遊牧民が遊びに来た。名前はトラガーと言い、日焼けしていて、白い歯が印象的だった。トラガーは子供の頃は勉強がきらいで、学校へは行かず馬に乗り羊や山羊を飼っていたとのこと。いろいろな話をしてくれた。

日本人から質問。この広い大地で迷うことはないの?夜の移動のときは?動物をつれてどのくらいの距離を移動するの?など。トラガー、迷うことはないよ。遠くの山や丘の形で方向をきめるから。星があれば方向はわかる。月も星もないときは、石を拾いマッチの火でどこの石か鑑別して行くのさ。動物の移動は1日で100キロ行くこともあるし、目的地までは何百キロもいくよ。トラガーから質問。僕は初めて日本人と話をしたけど、僕みたいな遊牧民をどう思う?日本人の牧ちゃんたちは、口々に男らしくてとても良い。学校なんて関係ないよ。トラガーはモンゴル・ウォッカを飲みながら白い歯を見せて嬉しそうに笑っていた。

 

五月二九日 晴れ

朝食後、ウランバートルへ向けて出発。ゲルを離れるのは少し寂しかった。食事を作ってくれた人たち、ありがとうございました。ここの食事は味付けも最高で、おいしく食べることが出来ました。僕たちを乗せた車は砂煙を上げながら、ガタガタ道を進む。途中沼地で車がはまってしまった。みんなで車を押してやっと脱出できた。良かった。牛や羊の群れが時々道を横切る。のんびりした情景だ。午後一時過ぎにウランバートルに着いた。モンゴルに来て初めての買い物。まずデパートでカシミアを買った。次にザハの市場へ行った。ここは昨年も買い物に来たことがある。食料品は豊富である。チーズとサラミなどを買い込んだ。

 

五月三〇日 天気晴れ

モンゴルを離れる時がやって来た。今回も優しい遊牧民と過ごすことが出来た。昼間の時間が長く、ゆっくりと時間が過ぎていく。おのずと馬に乗っている時間も長く、日本では考えられないほどである。馬とラクダにのって大満足。そして雄大な大地からエネルギーをもらい、いっそう元気。来年もモンゴル乗馬を実現したい。

 

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